仮面ライダー音楽 大鼎談
歴代仮面ライダー音盤の企画・構成・解説等を手がけられてきた、中村学、浅井和康、早川優の三賢人をお招きし、ライダー・ミュージックの商品化に賭けた20年間の歴史を存分に語っていただきました。「仮面ライダー」との出会い
- R3
- それではまず、仮面ライダーとの出会い、本放送当時の思い出などを、お三方それぞれから…。
- 浅
- 『仮面ライダー』本放送のとき、僕は10歳ですね。第一次怪獣世代なので、当初は7時からやってた『スペクトルマン』のほうに魅力を感じてました。初期の『仮面ライダー』は、なんだか怪奇ものみたいなイメージで、今ひとつのめり込めなかったんです。まだ当時は、「等身大ヒーロー」っていう概念が浸透してませんし、彼らが抱える「使命・孤独」みたいな側面にもあんまり共感できませんでした。それが変わったのが、サボテグロン以降、一文字隼人が出てきた2号編のあたりから。その頃から、カルビーのライダーカードとか、朝日ソノラマや講談社から色々な出版物が出てきたりして、さらに怪人の数も増えてきて、ようやく、『ウルトラマン』や『セブン』の怪獣と同列のものとして見られるようになってきましたね。それ以降は、もう熱狂的です。シオマネキングあたりでは、もう一番好きな番組といえば『仮面ライダー』という状態で。
- R3
- それ以降のシリーズは?
- 浅
- リアルタイムで真剣に見てたのは『X』くらいまでで、『アマゾン』『ストロンガー』になると飛び飛びでした。『スカイライダー』『スーパー1』の頃はもう高校生で、結構斜に構えて特撮番組を観るようになってましたけど、逆に、これはやっぱり観なくちゃいけないものだと思って、観続けてました。劇場版は『五人ライダー対キングダーク』1本を除いて、『仮面ライダー スーパー1』まで全て観てます。
- R3
- では、中村さんは?
- 中
- 僕も世代的には浅井さんと同じく、『ウルトラQ』の本放送をちゃんと観てるんだけど、本格的にアニメ・特撮にハマるキッカケになったのは『仮面ライダー』と『マジンガーZ』ですね。この頃、「ぼくらマガジン」のライダーと、「少年ジャンプ」のマジンガー、それからそれぞれのTV放映はまさしく僕の原体験です。ライダーに本格的に燃え始めるのは、冒険王で連載が始まったあたり。要するにゲルショッカー編くらいからですね。それからは『スーパー1』まで一気に観ましたし、劇場版も当然のように全て行ってます。
思い出深いのは『ストロンガー』で、タックルが死ぬ回がちょうど林間学校だったこと。一応TVもあったんだけど、みんな『はじめ人間ギャートルズ』観やがって。結局、ビデオが発売されるまで観られなかったんだよね。この悔しさは未だに覚えてます(笑) - R3
- では、早川さん、どうぞ。
- 早
- ぼくの世代は、ちょうどヒーロー番組の端境期で、面白いものはみんな昔の番組の再放送だったんですよ。だから第一次怪獣世代に乗り遅れたような気持ちがあったし、本放送でものめり込めるものが、それほどなかったんですよ。ようやく『帰ってきたウルトラマン』『スペクトルマン』が来て、それから『仮面ライダー』ですね。第1話からちゃんと観てます。放送前に「ぼくらマガジン」を読んでた記憶がないので、どうやって情報を得て、第1話からちゃんと観たのか、記憶が定かじゃないんですけど。旧1号編からものすごくハマってました。
たしか2号編の頃に、東京タワーで「仮面ライダー大会」っていうイベントがあったんですよ。その会場で第1話を上映してたんだけど、客席の周りにショッカー怪人がズラっと立ってるんですよ。ぼくの観てる隣なんか死神カメレオンでしたから、ものすごくコワくて(笑) そのイベントを境に、さらにハマりました。後楽園ゆうえんちも行きましたし。
「テレビマガジン」が始まって以降のあの全体的な盛り上がりはすごかったですね。ライダーカードが新版に切り替わって、旧版が手に入らなくなったときの焦りとか、ドレミ自転車が欲しくても買ってもらえなかったこととか…(笑 - R3
- 皆さん、最初に買ったライダー音盤は?
- 中
- 朝日ソノラマの最初のソノシート(AS-119)ですね。歌が藤岡版の。?
- 浅
- ぼくもそれです。「恐怖のくも男」のドラマ入りの。
- 早
- ぼくはそれの写真ジャケットの方(ARM-4533)ですね。ソノシートの材質が硬い黒いタイプの。歌は藤岡版でしたけど。
- 中
- LPレコードの「仮面ライダー ヒットソング集」(KKS-20082/1972.3)は持ってた?
- 早
- 持ってました。たぶん生まれてから2番目に買ってもらったLPレコードですね。
- 浅
- 僕は買ってもらえませんでした。挿入歌を聴いたのは、「レッツゴー!!ライダーキック」「ロンリー仮面ライダー」「かえってくるライダ−」「ライダーアクション」の4曲入りで縦長ジャケットで出てたコロムビアのレコード(C-510)、あれが始めてです。
- 中
- ぼくも持ってなくて、友達から録音してもらったのを聞いてました。当時はまだLP持ってる子なんて少ないから、そもそも挿入歌をちゃんと知ってるヤツはあんまりいなかったんだよね。
- R3
- その後のレコード遍歴は?
- 中
- 『V3』以降のLPは買ってました。
- 浅
- ぼくは『V3』以降も結局買ってもらえなくて、ずっと心残りだったんだけど。昭和50年くらい…中学3年の頃に、中古盤屋でソノシートも含めてイッキに自分で全部揃えました。
- 早
- ぼくも『V3』は買ってもらえませんでした。その代わり、「リコー・マイティーチャー」っていう教材用のテープレコーダーを買ってもらえたんで、『V3』の頃にはそれで番組中に流れる挿入歌や劇伴を録音してました。円盤シート状の記録媒体なんだけど、英会話用のソフトをみんな上書きして、そんなのばっかり録音してました(笑) だからLPに対する固執はそんなになくなっちゃったんですけど。でも、『アマゾン』のLP(CZ-7002)は欲しかったですね。なのに、なかなか店で売ってなくて。『アマゾン』と『グレート・マジンガー』のLPは、「プレイ・アニメ・シリーズ」っていう特殊なタイプだったんで。僕の中では、すごいレアアイテムのイメージがあります。
- R3
- 『がんばれ!!ロボコン』もそうですね。「プレイ・アニメ・シリーズ」のこの3枚は、未だにあんまり見ませんね。
- 中
- 僕は『アマゾン』『ストロンガー』の頃に、朝日ソノラマの8曲入りソノシートとか買ってましたね。あの悪名高い「2番抜き」の。その後でLPを聴いて、2番の存在に愕然としました(笑)
音盤構成作家への道
- R3
- では、そういう少年時代の後、何を間違って劇伴レコードの選曲構成などというイバラの道に迷い込んでしまったのか(笑)、お一人ずつどうぞ。
- 中
- 大学時代の漫研の先輩が「アニメージュ」でバイトしてたんです。で、その先輩が卒業しちゃうため、代わりの人間を捜してると聞いて、もうすかさず(笑)。あの頃のうちのサークルは特撮は東宝怪獣、アニメは高畑勲か宮崎駿みたいな先輩ばかりで。僕なんかはウォークマンでライダーの挿入歌とかを聴いてたから「お前、特撮の音楽聴くなら、伊福部だろ!」と、おもいっきり馬鹿にされてた部類だったんですよ。だから、くっそう、徳間に行けば、あの「テレビランド」もある、と(笑)。
そしたら、すぐに編集部で池田憲章さんや、今は「テレビマガジン」の大全集シリーズの構成なんかをしてる小野浩一郎さんなどと出会えたんです。特に小野さんとは、生まれて始めて自分が好きだったライダーのことを本気で話せて。彼が静岡で再放送された『X』のビデオをほぼ全部持ってると言うので、もうその晩に家に押しかけて徹夜で観たりしてね(笑)。本放送以来、自分の中で幻だった『X』と再会できたあの夜の衝撃や嬉しさが、この業界での僕の“起点”かもしれません。 - R3
- コロムビアさんとの関係はどのように?
- 中
- 大学時代の漫研の先輩が「アニメージュ」でバイトしてたんです。で、その先輩が卒業しちゃうため、代わりの人間を捜してると聞いて、もうすかさず(笑)。あの頃のうちのサークルは特撮は東宝怪獣、アニメは高畑勲か宮崎駿みたいな先輩ばかりで。僕なんかはウォークマンでライダーの挿入歌とかを聴いてたから「お前、特撮の音楽聴くなら、伊福部だろ!」と、おもいっきり馬鹿にされてた部類だったんですよ。だから、くっそう、徳間に行けば、あの「テレビランド」もある、と(笑)。
そしたら、すぐに編集部で池田憲章さんや、今は「テレビマガジン」の大全集シリーズの構成なんかをしてる小野浩一郎さんなどと出会えたんです。特に小野さんとは、生まれて始めて自分が好きだったライダーのことを本気で話せて。彼が静岡で再放送された『X』のビデオをほぼ全部持ってると言うので、もうその晩に家に押しかけて徹夜で観たりしてね(笑)。本放送以来、自分の中で幻だった『X』と再会できたあの夜の衝撃や嬉しさが、この業界での僕の“起点”かもしれません。 - R3
- それで最初に手がけられたのが、1982年5月発売の「BGMコレクション"キューティーハニ"」※2ですね?
- 中
- そうです。「BGMコレクション」としてはその後に『デビルマン』。その間、『超電子バイオマン』『宇宙刑事シャイダー』『キン肉マン』なんかの現行作品の構成や解説もしてました。
- R3
- で、その後が、1983年12月発売の「BGMコレクション"マジンガーZ"」と…。
- 中
- はい。最初にも言ったけど、とにかく僕は『仮面ライダー』と『マジンガーZ』が大好きだったから、『キューティーハニ』と『デビルマン』をやったら、当然その次には『マジンガーZ』がやりたいじゃないですか(笑) コロムビアのディレクターさんにも、ずっとそう提案してたんだけど、どういうわけか、いざ実現する段になったら、『マジンガーZ』の構成をアルバイトの人に振っちゃったんだよね。それで僕が憤慨して、「どうしても諦められないからお願いだからやらせて欲しいっ!」って懇願して、結局譲ってももらったの。それで選曲構成をさせてもらえることになったんだけど、その時、強引に作業を取っちゃって悪いことしたアルバイトの人っていうのが、他でもない、高島幹雄さんなんだけどね。その後十数年、会う機会がなかったんだけど、RYO-3さんの「Soundtrack Pub」でやっとお会いして、お詫びしましたけど(笑)。
- 早
- 高島さんは、その後、「アニメ・サウンド・メモリアル」シリーズでも、『マジンガーZ』のレコードを作って、逆襲してますね(笑)
- 中
- で、その流れで、今度は『ウルトラQ』と『マイティジャック』の「BGMコレクション」を作りたいけどどうかって言われたんだけど、それは僕よりももっと適任者がいるから、ということで、当時既に知り合いだった浅井さんに話を振ったんです。
- 早
- 浅井さんは、それ以前にも既に、特撮関係のお仕事をされてましたよね?
- 浅
- 特撮のファンクラブ関係で、ちょこちょこと色々な本のストーリー解説なんかをやらせていただいてたんです。たぶん、中村さんが「アニメージュ」でバイトされてた時と同じ頃だと思いますけど。その関係で、後にライダーの「BGMコレクション」でご一緒する金田益実さんともお会いしてます。
- R3
- 中村さんと出会われたのは…?
- 浅
- その頃、小野浩一郎さんが独立して編集プロダクションを作ったんですけど、そこに僕も出入りしていたんで、中村さんとはそこを介して知り合いました。
- 中
- 僕が、『Q』と『マイティジャック』の構成が出来る人がいないか訪ねていったんです。
- 浅
- そうでしたね。即、手をあげました(笑) 音盤を選曲構成そのものから作業させてもらったのは、この2枚が初めてです。
- R3
- 『Q』と『マイティジャック』は、1984年7月に同時発売ですから、作業はかなり大変だったのではないですか?
- 浅
- この時僕は医学系の大学4年生で、学校がめちゃくちゃ忙しかったんですけど、『Q』のレコードが自分で作れるなら、医者になれなくてもいいや、くらいに思ってましたね(笑) そういうわけで、金田さんとも中村さんとも既にその時お付き合いがあったので、お二人がメインの構成をして、ぼくはお手伝いという感じで入ったのが、「BGMコレクション"仮面ライダーI"」です。
■テレビ・オリジナルBGMコレクション「仮面ライダーI」(1984)
- R3
- では、いよいよ、1984年11月発売の「BGMコレクション"仮面ライダーI"」(CX-7198)についてのお話をお願いします。
- 中
- 最初は僕に話が来たんです。もちろん念願の『仮面ライダー』だから嬉しかったけど、さすがにシリーズ全体としてのヴォリュームがすごいし、まだビデオですら発売されていない頃なので、資料も不備だらけ。とても僕などが手を出せる代物ではなかったんですよ。そこでコロムビを通じて、業界の大先輩である金田益実さんに構成と総監修をお願いして貰い、僕はそのサポートという形を取らせて貰ったんです。
- R3
- ライナーノーツのクレジットでは、「作品解説:金田益実」「解説:中村学」となってますが。
- 中
- この表記だとわからない、というより僕が選曲したみたいな印象だけど、実際は金田さんの構成なんですよ。
- 浅
- そうですね。ぼくは「制作協力」のところに名前を載せていただいてますけど、確かに、金田さんから曲の構成案を見せてもらって、相談を受けた記憶があります。
- 中
- そう。ちゃんとライナーに書かれてないのがマズいんですけどね。
- 早
- 僕も、双葉社の「仮面ライダー大全」でライダー音盤史について書いたとき、1枚目の構成を中村さんと書いてしまって、金田さんに大変失礼なことをしてしまいました。
- 中
- とにかくこの1枚目の構成はほとんど金田さんの労作です。あと、裏話を告白すると、当初は初代の『仮面ライダー』だけで1枚のLPにする予定でした。それを強引に『V3』まで入れ込んだのには訳があって、全部で6回ある『仮面ライダー』の劇伴録音のうち、今も発見されてない第6回分はもちろんだけど、この時点では、第3回分も未発見だったんです。そういう意味で、中途半端なまま『仮面ライダー』だけで1枚つくるより、『V3』も含めた形にして、ぜひとも2枚目以降につなげたかったんですよ。その間の時間で、未発見曲を捜索する時間を稼ぎたかったわけです。これ1枚だけで終わってしまうのが、何よりコワかったんですよ。
- 浅
- この状態では、画竜点晴を欠くということで、金田さんも悩まれてましたね。
- 中
- もう一つ、個人的な思いを話すと、あの頃は「旧1号編」だけが、妙に神聖視されていて、僕らより先輩の特撮ファンの方々も、初期13本だけが円谷作品などと肩を並べる傑作だ…とか、そういう誉め方をする人が多かったんですよ。だけど、この「BGMコレクション」は、そういう時代の空気に呑まれたくなかったんです。当然、収録時間の限界まで1号・2号編の劇伴を収めた方が、音盤としての完成度や、作品世界の再現度も充実した物になることは重々承知してました。でも、その反面、あの時代の「ライダー音楽の評価」というものが、その1枚で「完結」してしまいそうな予感がして…。特撮ファンの先輩たちが何と言おうが、自分の中では、1号、2号、V3、ライダーマン…
- に
- オーっ!(笑)
- 中
- …X、アマゾン、ストロンガー、スカイもスーパー1もZXも… みんな連続した世界で戦い続けてきた存在であり、しかも各個の作品としても語るべき独自の魅力を持っている…と、僕は主張したかったんです。
- 浅
- そう。1号・2号編だけでライダーの音楽世界を閉じたくなかった。
- 中
- そして、おそらくそれは、「テレビマガジン」や「テレビランド」で、ライダーを本気で応援していた、自分より下の世代の人達には、きっと通じる「思い」じゃないかとも……。
- R3
- 通じますとも!
- 中
- だから、第2集の発売すら決定しないのに、シリーズの網羅を予感させる1号・2号・V3篇という構成に、どうしてもしたかったわけです。まあ、結果として全シリーズが発売出来て、本当にホッとしたわけですが。
- R3
- 評判はどうだったんですか?
- 中
- 実際、コロムビアのディレクターさんから聞いた話だと、発売後「なぜ、1号・2号編だけで一枚にしなかったのか!」という葉書は、やっぱり来てたそうです。
- R3
- やっぱりですか(笑)
- 中
- ただ逆に、この結果、初代『仮面ライダー』の劇伴を収めた単独盤の実現は、早川君が企画して下さった「ETERNAL EDITION」が発売されるまで、20年間もの歳月を要してしまったわけで。単独作品『仮面ライダー』としての正当な音盤評価を遅らせてしまったという、複雑な思いもあるんです。しかも、まだ未発見音源や、流用曲の元作品の捜索が未だに続いてますし。本当、早川君には、いくら感謝の言葉を積み重ねても足りないんですよ。
- 早
- いえ、そんな、勿体無いお言葉です…。
- 中
- それからもう一つ。さっきもそういう話をしましたけど、この当時、『仮面ライダー』と『V3』の劇伴も、実はコミケで売られてたんですよ。ファンのサークルがカセットテープにダビングしてね。
- 浅
- 濃い特撮ファンの間では、そのテープはかなり流通してたんですけど、これには第3回分の録音曲もちゃんと入ってました。だから余計くやしくてね。僕らとしては、そういうアンダーグラウンドなものを「知ってる人だけが聴いて楽しんでいる」みたいな状況をなんとか早く終わらせたいと思ってましたから、一刻も早く一般商品としてレコードを発売したかった。なまじ既に出回ってるものだからこそね。
- 中
- 収録内容の話をすると、藤岡版「レッツゴー!!ライダー・キック」が、放映当時の朝日ソノラマ盤以来の初収録です。これがソノラマにもコロムビアにも音源がなくって、一時は僕が持ってるソノシートから音を拾おうかって話にまでなったんだけど、ギリギリになって東映から発見されたんですよ。
- 早
- その後の調査で、コロムビアにもあることが分かるんですが、一度「使用禁止」扱いになってる曲なので、書類にも載ってないんですよ。だからその当時は見つからなかったんだと思います。
- R3
- さらにこの時点では、『V3』のアクション曲と挿入歌メロオケも発見できなかった、とライナーには書いてありますが。
- 中
- アクション曲というのは、「M-1」と「M-2」のことですね。
- 浅
- この2曲だけは別のリールに収録されていて、当時そのリールだけが見つかってなかったんです。例のアングラテープにも、この2曲は入ってませんし。
- 早
- 東映にある『V3』のマスターテープの第1巻は、いきなり「M-3」から始まってますからね。
- 浅
- そこが不思議なんです。『仮面ライダー』の時みたいに、他の番組と一緒に録音してるわけでもなかったし。
- 中
- あとは、「ライダーアクション」のメロオケが、僕らが意図した曲とは別ヴァージョンが収録されてて、完成品を聴いて僕らもひっくり返ったという事件がありました(笑) メロを取ってる楽器が違ってるのね。マスタリングの時のミスだと思うんだけど。当時はまだマスタリング作業かには、僕らは立ち合わせてもらえなかったから。だからこういう事故も多かったんです。
■テレビ・オリジナルBGMコレクション「仮面ライダーII」(1985)
- R3
- では、続いて1985年5月発売の「BGMコレクション"仮面ライダー II"」(CX-7219)についてですが、これは、各曲の解説が中村さん、全体解説が金田さんとしかクレジットがありませんが。
- 中
- これも書いてないんですが、実は『X』『アマゾン』が僕、『ストロンガー』が金田さんの選曲です。『ストロンガー』は、当時ビデオが全然入手できなかったんですけど、金田さんが本放送の音声をカセットに全話録音されてたので。
- に
- この時は浅井さんは?
- 浅
- お誘いいただいたんですけど、ちょうどこの頃にキングのSF特撮シリーズが始まって、『ミラーマン』かなにかの仕事を抱えてて忙しかったんですよ。だから、申し訳ないんですがお断りしました。だから、2枚目に関しては僕はノータッチです。
- R3
- この2枚目が完成する頃に、「刑事くん & 仮面ライダー」とラベリングされたテープが発見されたけど、この盤には収録できません。すみません! というようなことがライナーには書いてありますが、これが、例の『仮面ライダー』の第3回録音分ですよね?
- 中
- そうです。これでようやく『仮面ライダー』の劇伴がほぼ完全に揃うということで、「BGMコレクション」も3枚目、4枚目まで出せるぞ! という状況になってきたんです。
- R3
- それからこの盤では、「きょうもたたかうストロンガー」子門真人版が初収録ですね。
- 中
- これは、前回に藤岡版「レッツゴー!!ライダーキック」を捜索してた時に偶然発見されていたものです。同時に「見よ!!仮面ライダーストロンガー」の子門版もも発見してましたが、この盤では時間の都合で割愛してますね。
- に
- 『X』『アマゾン』『ストロンガー』に関しては、音のマテリアルは全て揃ってたんですよね?
- 中
- ありました。この時点ではね(笑) この時には『ストロンガー』のテープも完全にあったんですよ。この後の第4集のときにもありました。
- 早
- それ以後、2号リールを除いて『ストロンガー』のテープは行方不明になっちゃうんですよね。おそらく、第4集の作業が終わった後に、何かのトラブルがあったんだと思うんですけど。「仮面ライダーBGM大全集(下巻)」に入ってるストロンガーの音源は、やむを得ず、この第3集のマスターから移植する形になってしまったわけです。
- 中
- それから、申し訳ないことに、この盤にも収録曲のミスがあるんですよ。『アマゾン』のセクションに、『X』からの流用曲を入れたくて、ライナーにもそう書いたのに、結局『アマゾン』の曲が入っちゃって。
- 早
- そうそう。なかなか渋い構成だなぁと感心しながら聴いてみたら、『アマゾン』のテーマアレンジだったんで、「あれ?」って(笑)
- 中
- これがCD化されたときにも、この解説文が全く直ってなくて、すごく恥ずかしい思いをしました。この場を借りてお詫びさせてください。
■テレビ・オリジナルBGMコレクション「仮面ライダーIII」(1985)
- R3
- では次に、1985年8月発売の「BGMコレクション"仮面ライダー III"」(CX-7236)ですが、構成・解説者の表記が全くないんですが、これはどうしてなんでしょう?
- 浅
- これ、何か意図があって名前が載ってないんでしたっけ?
- 中
- いや、そんなことはないはずだけど…。これは、逆に僕が忙しすぎて解説を浅井さんにお願いしたんです。構成は『スカイライダー』は金田さん、『ZX』は僕です。『スーパー1』は…… どっちだっけ?
- 浅
- このタイトルの付けた方は、中村さんじゃないですか?
- 中
- 『スーパー1』のアイキャッチって編集した音源だからワークテープにしかなくって、それを入れましょうよって交渉した憶えはあるけど……。御免、忘れた。やっぱり金田さんだったと思いますよ。
- R3
- この時収録された『スカイライダー』の劇伴は、LP「組曲仮面ライダー」(1979.12発売/CQ-7037)用の音源ですか? TVで使うための2chモノの音源ですか?
- 中
- 「組曲」用の音源です。組曲のおいしいところだけ切り取るっていう、菊池先生には非常に失礼な編集をしてしまいました(笑) それと、この3枚目の完成直前に、「組曲仮面ライダー」の再販が決まったんだよね。
- 浅
- そうそう。それなのに、ここにも『スカイ』の劇伴を入れていいのかなぁ、って思ったのを覚えてますね。
■テレビ・オリジナルBGMコレクション「仮面ライダーIV」(1985)
- R3
- この後、「組曲仮面ライダー」が再販され、さらに1985年12月には、「BGMコレクション"仮面ライダー IV"」(CX-7256)が発売されます。
- 浅
- 第4集の解説は僕ですね。あと、『仮面ライダー』だけ、僕が選曲させてもらってます。それ以外は全部中村さんでしたよね?
- 中
- ポイントのV3未収録曲をどのブロックに入れるかを金田さんに決めて貰って、残りを僕が割り振ったのかな? でも、このアルバムのラストだけは「仮面ライダー讃歌」のメロオケ以外にはあり得ない! と、もう最初から心に決めてました(笑)
- 浅
- ここでようやく『V3』のメロオケと「M-1」が収録されるわけですが、「M-2」はなかったんですか?
- 中
- この時点ではなかったんです。「M-1」も映広音響にあった後楽園のアトラクション用のテープからの音源です。これがね、ショーで闘ってる間、ずっと流すために何度も繰り返しループで編集されてて6分くらいあるんだよね(笑)
- 浅
- そうそう。コロムビアで試聴したとき、「これいつ終わるんだよ!?」って(笑)
- 中
- だから、「M-1」のオリジナルの長さが、この時にはよく分かってなかったんですよ。
- 早
- 「M-2」の初収録は、「仮面ライダーBGM大全集(上巻)」ですね。この後、菊池先生が保管されていたテープの中から発見されたんです。
- 中
- あと、これにもミスがあって、「Xライダーアクション」のメロオケをフルで、「おれはXカイゾーグ」のメロオケを1コーラスで入れたいと思ってたのに、またマスタリングのミスで逆になっちゃってます。すみません。
- 早
- 子門版の「レッツゴー!!ライダーキック(TVサイズ)」はこの盤が初収録ですね。それから、解説には「燃えろ!仮面ライダー」のメロオケを収録…、とあるんですけど、これは実は存在してなかったんですよね?
- 中
- その通りです。これは、当時『スカイライダー』の録音に立ち会ってるコロムビアのディレクターさんが、「ある」と断言してたので、解説にもそう書いてあるんですけど、結局なかったんですよ。だから、結果的にこれも表記ミスですね。
- 浅
- この盤は、LP一枚に『仮面ライダー』から『スーパー1』まで詰め込んであるんで、とにかく収録時間が厳しくて。その後に禍根を残す『V3』メロオケの短縮編集も、そのせいでやむを得ず…の処置だったんですよ。
- 早
- この作業の後、『V3』メロオケを収録したテープが、これもまた紛失してしまうんですよね。後に僕がCDボックス「仮面ライダーBGM大全集(上巻)」を構成したときに、この短縮編集をしたと思ってる方もいるみたいですけど、違うんです(笑) この「BGMコレクション」第4集の音源しか、結果的に見当たらなくなってしまったからなんですよ。
- 中
- まさかこの後にテープが無くなっちゃうとは思わないからねぇ。
- 浅
- あと、この4集はジャケットにも口を挟んだんですよ。
- 中
- 1・2・3集のジャケットが、あんまり良くなかったから(笑)
- 浅
- あの岩場の写真は僕が選んだんだけど、どういうわけか、コロムビアのディレクターさんは何か勘違いをしてて、「君! 今回の写真はいいぞ! アラスカでロケをしたときの写真だそうだ!」なんて、僕に言うんですよ。それがおかしくて。どこから出てきたんだろう「アラスカ」なんて(笑)
- 全
- --大爆笑--
- R3
- この「仮面ライダー IV」をもって、6年間続いていた>「BGMコレクション」のシリーズそのものが終了します。仮面ライダーは、その最後を飾る番組だったわけですが、逆に考えれば、一番後回しになっていた企画…ということになるんでしょうか?
- 中
- 仮面ライダーのBGM集の企画がなかなか通らなかったというのは確かにそうです。実は、最初に『キューティーハニ』でコロムビアさんに呼ばれた時から、各ディレクターに『仮面ライダー』と『マジンガーZ』を絶対に出しましょう! 売れますよ! と言い続けて、企画書も作ってたんです。だけど、当時のアニメ・特撮ファンの大勢もそうだったように、コロムビア社内の人も、『仮面ライダー』や『マジンガーZ』は子供向けの作品…という認識がすごく強かった。だから、ヒット曲集はOKだけどBGM集みたいな上の年齢層を意識した企画は成立しないと、突っぱね続けられたんです。
- 浅
- 当時の「宇宙船」(朝日ソノラマ)の記事なんかを見れば判るように、あの頃は東宝作品や円谷物が主流で、東映作品は『悪魔くん』や『仮面の忍者赤影』なんかの初期作品か『人造人間キカイダー』ぐらいしか扱われない、不思議な空気があったんです。
- 中
- そう。『仮面ライダー』は、あれだけ皆、子供の頃に熱狂して見ていたはずなのに、なぜか大人の鑑賞に堪える番組じゃない的なレッテルが張られつつあって。その空気が、音盤界にも浸透してたんですよ。今、思うと妙ですよね。同じ菊池先生の作品でも『ゲッターロボ』や『新造人間キャシャーン』『闘将ダイモス』『大空魔竜ガイキング』の企画は通っても、王道の「ライダー」が駄目なんて。 だから、もう機会があればライターという立場を活用して雑誌媒体なんかで紹介記事を企画したり、連載コラムを持っている人達に正当な評価を書いてくれとお願いしたり。
- R3
- そういう「気運」から作っていかないといけなかったんですね。
- 中
- そうそう。それで、ようやくBGM集の発売にも辿り着けた、みたいな…。そんな時代だったんですよ。
■SFXスペシャル 仮面ライダー HIT COLLECTIONS(1986)
- R3
- その後、1986年の3月から10月にかけて、「SFXスペシャル 仮面ライダー HIT COLLECTIONS」というソングコレクションのLPが3枚出ていますが。
- 中
- クレジットはないけど、選曲のお手伝いをしてますね。
- R3
- 収録はコンプリートではなく、割愛された曲がありますよね。
- 中
- 残念ながら収録時間の関係でそうなっちゃいましたね。こういうときに絶対漏れちゃうのが、『スカイライダー』の「8人ライダーヒットメドレー」でね。BGM集のときには「あれはBGMっぽくない」って言われて、ソンコレのときには「あれは歌じゃない」って言われて、なかなか収録されない(笑)
- 早
- これは講談社の「テレビマガジン」編集部の写真を、 ジャケットに使ってるので、キレイですよね。
- R3
- 確かに、「BGMコレクション」の頃は、妙な背景をつけたり、枠取りをしたり、デザインは今ひとつでしたね。ウルトラシリーズもそうでしたけど。いい写真を1枚ベタで使えばいいのに。
- 中
- その頃のコロムビアの方針だったんですよ。こういう感じのデザインは。デジタルトリップ・シリーズとかもそういう感じでしょ。
- R3
- それから1989年に、BGMコレクションの4枚と「組曲仮面ライダー」がCD化されてますが。
- 浅
- あれは、アナログ盤からの変更点はなんにもないんだよね?
- 中
- ないと思います。このCD化はぼくも浅井さんもノータッチなんですよ。知らない間に発売されてて。僕は、『アマゾン』の『X』流用曲についての解説とか、手直ししたい箇所がいっぱいあったんだけどね(笑)
■仮面ライダーCOMPLETE SONG COLLECTION(1992)
- R3
- 次いで、1992年には、CD「仮面ライダーCOMPLETE SONG COLLECTION」が出ますが、ここでようやく早川さんの登場ですね。
- 早
- そうです。コロムビアでライダー関係のお仕事をさせてもらったのは、この時が初めてです。
- R3
- CD1枚に1シリーズで、カラオケまで完全収録という構成スタイルは、早川さんのアイディアですか。
- 早
- はい。これは、CDボックス「仮面ライダーBGM大全集(上・下)」と同時に出した企画なんです。
- R3
- このシリーズは、1996年にジャケットを一新して再発されてますが。
- 早
- そうなんです。新と旧ジャケットでは、キャラクターの写真の選択を改めて、全体的に明るいトーンのデザインになっています。旧ジャケでは仮面ライダー1号が、後年のゲスト登場時のものだったりもしていましたので。
- R3
- このシリーズで特筆すべきなのは、やっぱりカラオケ音源の収録ですね。
- 浅
- それまでの僕らの作業では、カラオケをしっかり探したことってなかったんですよ。
- 中
- そうでしたね。
- 浅
- モノラルしかない音源が時々あるのはどうしてなの?
- 早
- ステレオ収録されてるのは、コロムビアがちゃんとカラオケのマスターを保存してあった曲です。録音した音楽のテープに整理番号をつけて倉庫に保管する手続きを取ることを、メーカーの用語で「アゲる」っていうんですが、カラオケの場合、この手続きまでしっかり完了する音源は、残念ながら全てではないんですよ。ある年代以後のシングル曲については、カラオケもほぼ完璧に保存されているんですが、アルバム用の楽曲になると、保存状態がマチマチのようです。それでも、コロムビアさんは保管状態が極めて良い会社ですね。
- 中
- 「きょうもたたかうストロンガー」はカラオケ音源自体が未発見だしね。あと、「仮面ライダースーパー1」と「火を噴けライダー拳」にガイドメロが入ってるのはどうしてなの?
- 早
- あの時代の楽曲って、結構ガイド・メロ入りのカラオケもしっかり保管されているんです。『スーパー1』に関しては、当時のCDの担当ディレクターの判断で、あのテイクを収録したように記憶しています
■仮面ライダーBGM大全集(上)(1992)
- R3
- そしてついに、5枚組CDボックス「仮面ライダーBGM大全集(上)」(COCC-10546〜50)が1992年12月に出るわけですが。
- 中
- 我々の不備をかなり修正していただいて、ありがたかったです(笑)
- 早
- いえそんな、とんでもない(笑) 実は、この大全集の企画の前に、東映テレビ事業部30周年の大全集CDの企画があったんですよ。その段階では浅井さんにもご協力いただいてたんですが。最初は主題歌集のはずだったんですが、いつのまにかBGMも含んだ話になってて…。
- 浅
- 更に何故か『怪談せむし男』とか『海底大戦争』とか、怪奇・幻想映画も必要だとか、話がふくらんじゃって(笑)
- に
- もう「テレビ」じゃないですよ、それ(笑)
- 早
- 企画がすごい暴走してました(笑) CD10枚組の構想で、選曲構成までほとんど終わってたんですが、コロムビアの担当ディレクターさんが退社されたんで、ポシャっちゃったんですよ、残念ながら。
- R3
- BGMリストが一覧表の形でまとめられたのは、この時が初めてですか?
- 早
- いえ、その前に浅井さんが編集に参加されていた講談社の「仮面ライダー怪人大全集」(1986年)で一度作ってます。ですから、この「怪人大全集」のときと、幻の「東映テレビ大全集」のときとの2回の事前調査の成果が、この「仮面ライダーBGM大全集」に活かされてるわけです。
- R3
- このブックレットには、平山さんと菊池先生のコメントが入ってますが。ここで渡辺順さんの「マリンブラ」等、特殊楽器の話が初めて出てくるわけですけど。
- 早
- 平山さんは寄稿していただきました。菊池先生は、僕が取材させていただいて書き起こしてます。
- R3
- 例の『仮面ライダー』第6回録音分は、この時にもなかったわけですね。
- 早
- そうなんです。「東映テレビ大全集」の企画段階で、あらゆる東映ドラマ音源の一斉捜索をしたんですが、そのときにも見つからなかったんです。ただしこの時に、『超人バロム・1』『変身忍者嵐』と同時に録音されたということは判明して、『バロム・1』のリールから1曲だけ発見はされたんですけど。
- 浅
- その前の「仮面ライダー怪人大全集」のときにも、流用曲を含めてかなり本格的に捜索したんですよ。この時は、菊池先生のところにラジカセを担いでいって、先生にも流用曲を聴いていただいたんですけど、それでもわかりませんでした。
- 早
- 第1話の変身の曲とかも、ずっと『キイハンター』の流用じゃないかと言われてて…。
- 浅
- 結局、「キイハンターではなかった」という事が分かっただけだったけどね(笑)
- R3
- 『V3』の「M-2」はこの時に初収録ですね。
- 早
- そうです。「M-1」も、オリジナルの形でちゃんと収録されました。
- R3
- その代わりに『V3』のメロオケ音源が不明になってしまったと…。
- 早
- そうなんですよ。なのでやむを得ず一部の曲は「BGMコレクション」のときのマスターから1コーラス編集版を収録したわけです。あと、この時には『ストロンガー』の音源がなくなってることも判明していました。「下巻」の発売までには、必ず見つかると思ってたんですが…。
■仮面ライダーBGM大全集(下)(1994)
- R3
- というわけで、1994年9月に「仮面ライダーBGM大全集(下)」(COCC-11971〜75)が出ます。約2年近くもブランクが開いてしまったのは?
- 早
- これはとにかくずっと『ストロンガー』の音源を捜してたんです。本当はすぐ出したかったんですけど。結局、特典ディスクの応募期限のリミットが迫ってきちゃったんで、やむを得ず出した感じですね。
- R3
- このボックスでは、『スカイ』と『銀河王』の音源が2chモノラルの状態で初商品化されてますね。
- 早
- そうですね。「組曲仮面ライダー」と差別化しなくちゃいけないので。
- に
- ウォークマンで聴いてると気が狂いそうになるけどね(笑)
- 早
- これはヘッドホンで聴いちゃだめですよ(笑)
- R3
- それから、上下巻購入者への特典ディスクがありましたね。
- 早
- 最初の案では効果音を収録したディスクになるはずだったんですが、結局、効果音を作るための元になってる「音素材」はあったんですが、番組で流れてる状態の音源はなかったんですよ。なので、未収録BGMを収録する形になりました。
■LD & 石ノ森萬画音楽大全
- R3
- この頃、ライダーのLDが続々発売されているわけですが、音声特典などに劇伴音源が含まれていたりは? 他の作品だと、いくつかそういう例がありましたが。
- 早
- そうですね。なぜかライダーだけは音声特典に劇伴が付くことはなかったですね。すでにほとんどの音源が、コロムビアから商品化されていたことも関係あるかもしれませんね。
- R3
- その後、1998年には「石ノ森萬画音楽大全」シリーズの一環として、「組曲仮面ライダー」が再CD化されますが
- 早
- これは、『銀河王』のコロムビアのステレオマスターを完全収録したのがポイントです。「BGMコレクション"仮面ライダー III"」に一部入ってましたが。
- 中
- この「石ノ森萬画音楽大全」の企画はどうやって決まったの?
- 早
- これは、ライターの田上悠さんの企画です。企画の立ち上げが比較的急だったこともありまして、先ずは既に商品になってるものの再発+αという形で、「組曲仮面ライダー」と『宇宙からのメッセージ』から開始することになったんです。
- に
- 途中でシリーズが終わっちゃってるけど…(笑)
- 早
- 諸般の事情で現在は続刊が出ていない状況ですが、明確な終了宣言が行なわれたわけでもないですし、形を変えてでも何とか続行できないものか、と考えています。僕としては、このシリーズで『宇宙鉄人キョーダイン』もやりたかったし。『変身忍者嵐』『ロボット刑事』もなんとか音源を発見して音盤化したいと思っているんですけど…。
■ETERNAL EDITION 仮面ライダー(2002)
- R3
- そして、ようやく現在に辿りつきましたが、2002年7月に「ETERNAL EDITION 仮面ライダー」(COCX-31908〜10)が発売されます。藤岡弘版「レッツゴー!!ライダーキック」5連発には驚きましたけど(笑)
- 早
- いや、すみません(笑) でもこれも例のアングラテープには入ってたので、知ってる人は知ってる音源だったんですよ。この衝撃をより多くの皆さんと共有したくて(笑)
- 浅
- とにかく、新しい音源が収録されているっていうのは、大切なことだし、必要なことですよ。
- に
- でも「仮面ライダーバブルガム」の曲のほうがカッコよかったけど…(笑)
- 早
- あの曲は誰のアレンジなのか、結局分からなかったんですよ。
- R3
- 「ETERNAL EDITION」は、黒字に金や銀の特色でデザインしたシンプルなジャケットが統一フォーマットになってますね。
- 早
- この「ETERNAL EDITION 仮面ライダー」のときは、当初の案では、アイキャッチ用のイラストをジャケットにアレンジするはずだったんですけど、ちょっと許可が降りなくて。結局、立花レーシングのマークになりました。
- 中
- 例の第6回録音って、結局何曲あるの?
- 早
- Mナンバーとしては9曲ありますけど、全部は使ってないはずです。一番有名なのはゲルショッカーのマーチ、それから怪人用の2曲、あとミステリー系が1曲。この4曲はみんなよく覚えてる名曲なんですけど。
- 中
- 1曲だけ発見されたっていうんで、期待して聴いたら、一番印象の薄いアレ(M-130T4)だった(笑)
- 早
- そうなんですよ。むしろ『V3』の初期で使われてる印象のほうが強いんですよね。いずれにしても使用頻度は低いです。
■DVD「仮面ライダー1号・2号BOX & V3 BOX」(2002)
- R3
- この「ETERNAL EDITION 仮面ライダー」とほぼ同時の2002年7月に、DVD「仮面ライダー1号・2号BOX」が出ていて、ボーナスディスクが付いてますが。
- 早
- こちらも僕が関わらせていただきました。主に朝日ソノラマのソノシート音源ですね。当初はBGM集の予定でしたけど、エターナルが出るし、さすがに差別化しないといけないので。このCD自体の製作はコロムビアがやってるんですよ。それを東映ビデオさんへ収める形で。
- R3
- サン企画の「仮面ライダーえかきうた」※1が収録されるという情報も一部で流れましたけど。これは歌が子門さんなんで、個人的に大いに期待してたんですが…(笑)
- 早
- そうなんですけど、とにかくサン企画という会社自体がもう存在しないので、結局権利関係がクリアできなかったんです。残念ですけど。当然マスターテープなんかないので、僕の持っている現物から音を取ろうと思っていたんですけど。
- R3
- 続いて2002年12月には、DVD「仮面ライダーV3 BOX」も出てますが。
- 早
- これには僕はノータッチなんですが、音声特典はどうなってるんでしたっけ?
- 中
- 劇伴のマスターを直接収録してるだけだったよ。
- 早
- 本当は講談社の「仮面ライダーかみしばい」の音源もあって、これはOKが出てるので、何らかの機会に収録したいところなんですが。
- 中
- あぁ、アレか!(笑) アレはでも当時持ってた人じゃないと…。
- 早
- そうなんですけどね。当時、リアルタイムで子ども時代だった人には、非常に懐かしいアイテムなんですが、普通の人にとってはどうなのか…(笑)
※1 サン企画「仮面ライダーえかきうた」:当時、紙芝居やフォノシート付き絵本を発売していたサン企画によるオリジナルソング(菊池先生の作曲ではない)。仮面ライダーやサイクロン、怪人などの絵描き歌になっているが、子門真人("子門正人"と誤表記されている)が怪人のセリフを不敵につぶやいたり、「バラおんな」などという実在しない怪人が混じっていたりして、最高に笑える、いや泣ける代物。LPレコードSR-5004。
■ETERNAL EDITION 仮面ライダーV3(2003)
- R3
- DVDから一月遅れで、CD「ETERNAL EDITION 仮面ライダーV3」(COCX-32029〜30)が出ますね。ここでのトピックというと、なんと言っても挿入歌メロオケのフルサイズ収録ですが。
- 早
- これはマスターテープ自体が発見できたのではなく、当時の録音の関係者の方がコピーをお持ちなのがわかって、それをお借りできたということなんですけどね。ただ、DATにコピーしてあった音源なので、音質的な遜色はそれほどないはずです。
- R3
- あとは「戦え!仮面ライダーV3」の歌詞違いヴァージョンですね。「血がさわぎ」と歌っている…
- 中
- これは「BGMコレクション」の時にも探したんだけど、なかったんですよ。
- 早
- 「戦え!仮面ライダーV3」の歌がただコピーされてるだけのテープに、ひっそりと入ってたので、なかなか気づきにくかったと思います。今回の「ETERNAL EDITION V3」では、この曲の発見も重要課題の一つとして、意識的に探しましたから。
- 中
- 「血がさわぎ」以外は、大して違わないから、発見しにくいよね。
- R3
- これは、宮内さんのレコーディングのテイク何回目か…なんですか?
- 早
- そうだと思います。要するに単純に……
- R3
- 歌い間違い…ですか?
- 早
- はい、たぶん(笑) 東映さんのテープにはこれが入ってたので、番組中でも使われちゃったんでしょうね。
■怪奇!流用曲!
- R3
- 一応最新アイテムまで遡ってきましたが、あと残されている課題というと、特に『仮面ライダー』『V3』でよく聴かれる流用曲の解明がありますが…。
- 早
- いや正直に言って、今のところ判明してる曲ってないんですよ。
- 浅
- ないですねぇ。さっきも話に出ましたけど、何度か大掛かりな調査をしてるんですが…。
- 中
- 分かっていれば、とっくの昔にライナーとかで発表してるしね(笑)
- 浅
- 例の『仮面ライダー』第1話の変身の曲も、同時期に『キイハンター』で使われてるのは確かなんだけど、結局『キイハンター』自体の曲ではないみたいだし。
- 早
- まぁ、そもそも『キイハンター』自体、全ての音源が発見されてないんですけど…。『V3』の流用曲もまだ素性が分からないものがありますね。特にライダーマンの曲はなんとしても解明したいところです。
- 浅
- あれは音からして、やっぱり菊池先生の曲だろうね。
- 早
- そうですね。たぶん劇場用映画だと思うんですが。解明するには、任侠映画とかも全部見ないと(笑)
■ライダー・サウンドよ永遠に…
- R3
- では、今後の仮面ライダー音盤の展望は?
- 早
- 先ずはなんと言っても、『X』『アマゾン』『ストロンガー』の「ETERNAL EDITION」の実現ですね。どういう形でリリースできるかは、現在企画中なんですが。
- に
- DVD発売との連動は、スケジュール的に、もうちょっと難しいですか?
- 早
- そうですね。『X』のDVDはもう出始めますから、別なタイミングになるかと思います。
- 浅
- 『スカイ』『スーパー1』は企画むずかしいよねぇ。もう全曲CD化してるし。「組曲」はもう何度も出てるし。本音を言えば、『キョーダイン』や『銀河大戦』なんかの、まだちゃんと商品化されてない番組をぜひ取り上げて欲しいところだけど。
- R3
- では、最後に仮面ライダー音楽に関して、それぞれ総括を…。
- 中
- 「BGMコレクション」の頃は、ビデオもまだ全然出てなかったから、とにかく仮面ライダーを見て熱くなった原体験をパッケージ化して後世に残したいっていう情熱で作ってたところがあります。まぁ、「仮面ライダーの音盤」というものの商品価値やその認知度を上げるような役割は、若干でも果たせたのかな、と思っています。
ただ、今はビデオもDVDもあって、映像として完全に追体験できる状況ですから、その中で「音」だけを商品化する意味も全然違ってきてると思うんですよ。いい商品にするためには、解説書の充実とか、未発見曲の初収録とか、どんどんハードルが高くなっていく難しさがありますよね。その点は、早川さんはじめ、最近の構成者は本当に大変だと思うけど。でも逆に、その中にどれだけ熱いパッションを込められるかどうかも、僕らは期待して見てるところがありますけどね(笑) やっぱり、あんまり資料的な音盤を見るのは、淋しい気持ちもあります。 - 浅
- とにかく当時は映像も見られなかったんで、今思えば解説も選曲も悔いが残る部分があるにはあるんですけど、仮面ライダーの音楽に対する熱い思い入れだけは、確実にあったんですよ。ライダーのBGMを、なんとしてもレコードで聴きたい! 世に出したい!というパッションが。これだけはやはり伝えていきたいですね。
- 中
- だいたい、自分で構成したアルバムなのに、発売後にも擦り切れるほど聞いてるからね(笑)
- 浅
- これだけ商品が揃った現在だと、なかなか実感しにくいですが、当時はテレビの特撮番組の劇伴がレコードになるということ自体が夢物語みたいなものでしたから。東宝特撮はわりと早いうちにレコードになってたけど、そういうファンの人達は、『仮面ライダー』以降の東映テレビ特撮って、割とクールな眼で見てたところもあったんですよ。
- 中
- そう。ほとんど唯一、僕らのこういう思いをバックアップしてくれた先輩が、金田益実さんだったんですよ。
- 浅
- 金田さんの理解がなかったら、あの1984年という時期に仮面ライダーの劇伴レコードが実現していたかどうか、疑わしいですね。ひょっとしたら、90年代になるまで出なかったかもしれない。だからこそ、「BGMコレクション」の音盤化をやり遂げようという熱意だけはあったんです。
- 早
- 僕の場合、先輩の偉業を引き継ぎながらも、まだ課題を積み残してて、申し訳ないところなんですが。最近でも、「BGM大全集(上・下)」の時に作った資料を、一応ビデオで確認してたら、「これ未使用じゃないじゃん! 流れてるじゃん!」みたいなことはよくあることで(笑) 一度作ってもまだまだ完璧じゃないんです。
- 浅
- やっぱり、日々精進しないとダメなんだよね(笑)
- 早
- そうなんです。でも最近なんとなくビデオを見ながらBGMをチェックする集中力というか瞬発力が落ちてきたみたいな感じで、昔より時間がかかるんですよね(笑)
- 浅
- それはまぁ、しょうがないよ。僕もMナンバー忘れるし(笑)
- 中
- 当時は僕らも、そういう集中力は確かにスゴかったね。
- 早
- そういうわけで、初心を忘れずにがんばって行きたいなと思うと同時に、「ETERNAL EDITION」が『V3』で終わっちゃうと大変なことになるので、とにかくこれだけは続けていきたいですね。未発見、未収録、流用曲もまだまだありますし。仮面ライダーの音の探求は、まだまだ終わってません。
- に
- 全部解明されるまで、あと更に20年はかかりますね(笑)
- 早
- もうその頃は、にゃろんぱすさんにお任せしますよ。ぜひ「全菊池作品全Mナンバーリスト」を作ってください(笑)
- 中
- しかし、『仮面ライダー』が始まってから『ストロンガー』が終わるまで、たった4年9ケ月だったとは、到底思えないんだよね。この時間の濃さと熱さは(笑)
- 早
- ほんとですよ。ライダーマンが登場して大興奮したばかりなのに、次の号のテレマガには、もう「5号ライダー登場!」とかいってXのシルエットが載ってたりしてさらに大興奮(笑)
- 中
- あとは、この頃の番組はとにかく挿入歌の使い方が絶品だったんですよ。メロオケも含めて。曲ももちろんだけど、それを流すタイミングや選曲の仕方も、とにかくカッコよかった。その中でも特に、ライダーのアクション系の曲は素晴らしかった。
- 早
- 『V3』で「仮面ライダー讃歌」が流れ始めたときの、「なんてカッコいいんだろう!」と思った、あの興奮ですよ…。
- 浅
- 僕の場合は「ライダーアクション」だな。あれが流れ出すと燃えたなぁ…。でもそれが途中から主題歌になっちゃうでしょ?(笑)
- 早
- あれはぼくも当時観てて「これはやりすぎだ」って思いましたよ(笑) 主題歌にしちゃうとまた別な感じに聴こえちゃいますよね。
- R3
- ところで、一番好きなライダーソングって、なんですか?
- 中
- う〜ん、僕はやっぱり……
- -
- (話が振り出しに戻ってしまったので以下省略)
三人そろって 力をあわせ
あげるかちどき 待ってるぼくら!